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「どうゆう風の吹きまわしですか黒無常?夜更けの現生に夜風にあたろうなんて?」
平安の夜…草木を眠る丑満時に、黒無常いきなり夜の散歩に連れ出された白無常と童子達。既に床につこうとしていた3人は、寝間着で夜道を歩いていた。
「まぁたまにはいいじゃねぇか。」
白無常の言葉をカラカラと笑い受け流し、3人を先導して歩いていく。
「全く……貴方ときたら…」
呆れながらも、白無常は誘いが少し嬉し様で機嫌よく黒無常の後ろを歩く。
「2人とも暗いですから、足元には気をつけて下さいね。」
「はい、白無常さま。ほら黒童子、危ないから手をつなごう!」
「……」
童子2人も眠気が飛んでしまい、手を繋いで楽しげについて歩いていた。
「よ〜し着いたぞー」
4人がたどり着いた場所は川の橋…灯りも無く少し怪しげに感じる。
「川…ですか?何かあるのですか?」
「ん〜上見てみろ。」
言われるまま夜空を見上げると、天の川が空を流れていた。
「わ〜黒無常さま!白無常さま!凄く綺麗です!」
「本当ですね。雲ひとつなく…」
星の集まりが流れる夜空を、4人は見上げていた。
「それだけじゃないぜ?下の川も見てみな?」
視線を橋の下の川にうつすと、水面に夜空の川が映し出されている。まるで、天の川が流れているかの様に。
「こちらにも…本当に綺麗ですね。」
すると、黒無常が懐から何かを取り出し3人に渡す。
「?」
「これで、船作るぞ。」
「あ、作ったことあります!」
そう言う白童子に教わりながら、4人は作り出す。力加減が難しく、破いてしまいそうになりながらも、手の平に乗るほどの小さな笹舟が出来上がった。
「お、お前ら良い出来だな!」
「黒無常さまの少しいびつですよ?」
「良いんだよ!浮きさえすれば。」
互いの出来を見る3人の姿を微笑ましく白無常は見つめる。
「よし、出来たなら…願い事を想いながら川に船を流すんだ。」
「川に?」
「そうだ。船に願いを乗せて、天の川に流すんだ。」
無事に天の川を無事に流れきると、その願い事が叶う。そう黒無常が楽しげに語る。願い事を考え想いながら、童子達2人は同時に川に船を浮かせる。
「よし、俺たちも。」
「少し気恥ずかしいですが…」
そんな事を言いながら…そっと2人で船を川に浮かせた。
4つの船は川の流れに乗り…ゆっくりと流れて行った。
「うまく流れてくれると良いですね?黒無常さま!白無常さま!」
「安心しな、ぜってー流れてくれるさ。」
4人の願いを乗せた船は…そのまま見えなくなった。
「さぁ…帰りましょうか。」
「おう、そうだな。」
童子達がはしゃぎ疲れ、少しうつらうつらしているのをみて、黒無常は黒童子を背負い…白無常は白童子を抱き上げ帰路につく。
「…黒無常…貴方にも願いなんてあるんですね。」
「あ?あぁ……そりゃな。」
願いは口に出したら叶わないと、よく言うため互いには聞こうとしない。
しかしながら…みな願いはきっと一緒だろう。
年に一度の願い川…
瞬く星に小さな船の願いを託す。
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