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【小話】命の灯火を消す 判官と閻魔様の語らい

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花鳥風月

投稿時間: 2017-7-4 19:06:40 携帯電話から | すべてのコメントを表示 |閲読モード



生の火を持った者たちはいずれ消えていくのが転生輪廻の理。冥界には命に終わりを与える者とその魂を裁く者が居る。

暗い部屋に立ち並ぶ蝋燭。
ゆらめく灯りに照らされながら判官は、命の終わりを見極め書に名を書き留めその灯火を静かに消し去った。その者の命が終わったのだ。命が終われば肉体は朽ち魂だけとなる。
何事も無く冥府にくる者…未練があり現生に留まる者も居る。それを見定め、無常兄弟の様な鬼使いに指示を出すのも判官の役目である。

「……」

少し前に名を書いた魂を心眼で行方を追う。
こちらにくる気配が無いとわかると、判官は無常兄弟を呼びつけた。

「全く…人使い荒いな〜判官さんはよぉ」
「…黒無常は黙って居てください。判官さま、早急に行ってまいります。」
「任せたぞ、白無常。」

2人が指示に従い姿を消す。
それを見届けた判官は、小さくため息をついた。

「どうした判官。浮かぬ顔よのう。」
「閻魔様!何故貴女様がこの様な場所に!」

魂を裁く冥界の長 閻魔。
裁きの間から離れたこの場所に来るのは珍しい事だ。判官は乱れた衣類を整え対峙する。

「うむ。先ほど所用でやって来た黒無常がのう、お前の元気が無いと言っておった。」
「っ…彼奴またいらぬ事を…」
「どうしたのだ判官?何か悩みでもあるのか?」

閻魔に顎を持ち上げられ、逃げ場を無くした判官は息を詰まらせながら仕方なく話し出す。

「生身が朽ち…帰る場所も無く…魂だけの存在になってまで…現生に留まろうとするのでしょうか…。直ぐに此方へ来た方が安まるのでは無いのでしょうか?」

普通なら7日ほどで冥界にやって来る魂。
だが迷った哀れな魂はいく場所無く現生を彷徨う。その迷った魂を導くのは、先ほど指示で出掛けて行った鬼使いの兄弟の仕事。

「ただでさえ溢れかえるほど魂が来ますが…天に召される理りに何故欺くのか…それが拙者には理解ができません。」
「…ふむ」

閻魔は判官から手を離し、ゆっくりとした口調で語り始める。

「生は…短い。産まれた時に既に死と向かい合わせ…それはお主もわかっているだろう?短い分その時を精一杯生き抜いている。道を踏み外し罪を為す者 何事も無く全うする魂もある。 魂になれば精神とは離れるが…生きた証はしっかり魂に刻まれている。」
「…はい」
「意思もなくて彷徨うのは精神から離れ、それでも残った記憶の欠片。生前に印象深かった事を意味なく探してしまうのだろうな…。闇に染まる者も居るが…魂に刻まれるのは罪だけでは無い。あれは彼らの生きた証。それは本当に儚く美しいものよ。」

それを誘うのがあの子達の役目。
そう言いながら閻魔は優しげに目を細めた。

「彷徨うのは…生きた証…」
「そう…猶予を与えるのも彼らへの敬意…ゆっくり見守ってやるのも判官お主の役目であろう。」
「はい。閻魔の御心のままに…」

命に終わりを与え彷徨う魂を誘い冥界に運ぶ 。その魂の罪の数だけ罰を与える。
全て終えるとまた新たな生となる。
それは永遠と続く輪廻の理り。



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